
ラットプルダウンをしていると、背中より先に手や前腕が疲れて、バーを握り続けるのがつらくなることがあります。そんなときに使われるのがパワーグリップです。使う目安は、背中ではなく握力が先に限界になっているかどうか。素手で安定して引けている間は、そのまま続けても構いません。
パワーグリップは、手首に装着し、ベロと呼ばれる部分をバーへ巻き付けて握りを補助するトレーニング用品です。ただし、装着するだけで広背筋への刺激が大きくなると考えるのは早く、類似する握力補助具の研究でも筋活動や反復回数に明確な上乗せが確認されていない例があります。
この記事では、ジムのラットプルダウンでパワーグリップを使うタイミング、バーへの巻き方、ワイドグリップの手幅、重量の決め方まで順番に整理します。初めて使う方は、まず今までと同じ重量で装着と動作を確かめるところから始めてください。
ラットプルダウンでパワーグリップを使う目安は、握力が先に疲れるかどうか
背中はまだ動かせそうなのに、バーを握る手や前腕が先につらくなるなら、パワーグリップを試す目安になります。まずは、どの部分が先にセットを続けにくくしているのかを見てみましょう。
背中より先に手や前腕が疲れるときに取り入れる
ラットプルダウンでは、広背筋などの背中だけでなく、バーを握るために手や前腕も使います。そのため、背中にはまだ余裕があるのに「指が開きそう」「握り直したくなる」「前腕ばかりつらい」という状態になることがあります。
こうした状態が続く場合は、背中の疲労より先に握りが動作を止めている可能性があります。パワーグリップを試すときは重量を増やさず、同じ重さで最後まで動きを保ちやすくなるか比べると判断しやすくなります。
「背中はまだ引けるのに手が先につらい」と感じたときに試してみてください。
素手で安定して引ける間は、そのまま続けてもよい
バーを握ったまま最後まで動かせて、上体を大きく反らしたり勢いを付けたりせずに終えられているなら、素手のまま続ける方法もあります。
ラットプルダウンを始めたばかりなら、まず通常の握り方でマシンの動きに慣れ、「背中・腕・握力のどこが先に疲れるか」を確認すると、補助具を追加する理由が分かりやすくなります。
パワーグリップの有無より先に、座る位置や太ももの固定、バーを引く方向など基本フォームを確認したい方は、ラットプルダウンの基本的なやり方も参考にしてください。
ラットプルダウンでパワーグリップを使う目的は、握力を補うこと
パワーグリップは、「付ければ広背筋への刺激が自動的に増える道具」と考えるより、握りを補う用品として位置づける方が実態に合います。握力補助具を使った研究でも、装着によって筋活動や回数が一律に増えた結果にはなっていません。
リフティングストラップを使った研究では、回数・最大筋力・広背筋の筋活動に明確な差は確認されなかった
筋力トレーニング経験のある男性12人を対象に、ラットプルダウンをリフティングストラップあり・なしで比較した研究があります。人数の少ない研究なので、すべての人へそのまま当てはめるのではなく、一つの判断材料として見る必要があります。
研究では、1回だけ持ち上げられる最大重量を表す1RM、1RMの70%の重量で行った反復回数、広背筋の筋活動を比較しています。その結果、ストラップの有無による統計的に明確な差は確認されませんでした。
少なくともこの研究からは、握力補助具を付けるだけで「回数が増える」「広背筋の筋活動が高まる」とは判断できません。自分のセットを止めている原因が握力なのかを見て使い分ける方が実用的です。
研究結果はパワーグリップそのものの効果とは分けて参考にする
先ほどの研究で使用されたのはリフティングストラップで、この記事で扱うベロ型のパワーグリップそのものを直接比較した研究ではありません。どちらも握力の補助に使われますが、バーへの巻き方や固定方法には違いがあります。
そのため、この研究は「握力補助具を使ったからといって、広背筋への刺激や反復回数が一律に増えるとは限らない」という範囲で参考にします。パワーグリップを使ったときの変化は、同じ重量で握りや動作がどう変わるかを見て判断します。
商品を付けたこと自体ではなく、握力が原因で止まっていた動作を続けやすくなるかを見てください。
ラットプルダウンでパワーグリップを使うときは、バーに巻き付けてから握る
ベロ型のパワーグリップは、手首へ装着し、ベロをバーへ巻き付けたうえで通常どおり握って使います。製品によって形や巻き方に違いがあるため、実際には使用する商品の説明も確認してください。
ベロをバーに巻き、軽い重量でずれを確かめる
ここでいう「ベロ」は、手のひら側から伸びているバーへ巻き付ける部分です。手首へ装着したら、バーを手のひらとベロの間に置き、指を使ってベロをバーへ回して手のひら側へ戻します。
手首はきつく固定しすぎず、軽く回せる程度の余裕を残します。今回参照したメーカーの使用方法でも、手首を回せる程度に装着し、血流や動きを妨げるほど締めないよう案内されています。
初めて使う日は重量を上げず、ベロがずれずに巻けているかを先に確かめてください。
バーを握ったら、肘を下げるように引く
ベロを巻いたあとも、手を開いたまま引くのではなく、バーは通常どおり握ります。パワーグリップは握る動作そのものをなくす用品ではありません。
座ったら太ももをパッドで固定し、上体を大きく揺らさず、肘を下へ動かすようにバーを引きます。手でバーを引っ張ることだけに集中せず、肘の軌道を目印にすると動きをそろえやすくなります。
バーを戻すときも急に手を緩めず、腕が上がる動きをコントロールしてから次の反復へ移ります。
外すときは握りを緩めてからバーを離す
セットを終えたら、バーを元の位置へ戻してから握りを緩めます。今回参照したベロ型製品の公式手順では、握りを緩めることでパーム部分がバーから外れる流れになっています。
製品によって構造は異なるため、外れにくい場合に無理に手を引き抜くのではなく、使用している商品の外し方を確認してから操作してください。
装着中に確認したいこと
・手首が強く締め付けられて痛む、しびれる場合はいったん外す
・ベロがずれる場合は、重量をかける前に巻き直す
・肩、肘、手首に強い痛みが出た場合は、そのセットを中止する
ラットプルダウンのワイドグリップは、肩がすくまず引ける手幅を選ぶ
ワイドグリップは、広く持つほど広背筋への刺激が大きくなるとは限りません。研究では、肩幅に近い位置から約2倍までを比較しても筋活動は全体として大きく変わらず、最も広い手幅では扱えた重量が少し低くなりました。
肩幅の1倍・1.5倍・2倍では、広背筋の筋活動に大きな差は確認されなかった
15人の男性を対象とした研究では、順手のラットプルダウンについて、左右の肩先の間隔にあたる肩峰間距離の1倍、1.5倍、2倍という3種類の手幅が比較されています。
結果を見ると、広背筋、僧帽筋、棘下筋の筋活動は手幅による大きな違いがなく、「一番広く握れば広背筋が明確に強く働く」という結果にはなっていません。
ワイドグリップを決めるときは、幅そのものを広げ続けるより、肩や肘を動かしやすく、バーを安定して引ける位置を探す方が実践しやすくなります。
肩幅の2倍より、1倍・1.5倍の方がやや大きな重量を扱えた
同じ研究では、6回できる最大重量を表す6RMも比較されています。肩峰間距離の1倍では平均80.3kg、1.5倍では80.0kgだったのに対し、2倍では77.3kgと少し低い結果でした。
この重量をそのまま自分の設定へ当てはめるものではありません。参加者は15人で、体格やトレーニング経験によって扱える重さは変わります。
研究からは、極端に広い手幅を選ぶこと自体に明確な優位性があるとは判断できません。
手幅に迷ったら、研究の中間幅だった肩幅の1.5倍前後を参考にする
先ほどの研究で使われた1.5倍は、3種類の中で中間にあたる手幅です。これは「1.5倍が全員に最適」という意味ではなく、ワイドグリップの位置を考えるときの参考値として使えます。
実際には肩幅よりやや広めから試し、肘を下へ動かしにくい、肩が過度に上がる、動きが窮屈に感じる場合は少し狭くします。無理なく同じ軌道で引ける位置が見つかれば、その幅を基準に続けます。
研究の数字をそのまま合わせるより、自分が安定して引ける位置を優先してください。
握りやすくなっても、重量は動作を崩さず引ける範囲にする
パワーグリップを使って握りが楽になっても、最初はそれまで使っていた重量で動作を確認します。握力の余裕と、背中や上体がその重量を安定して扱えることは分けて考えます。
まず同じ重量で、肘を下へ引く動きを安定させる
初めてパワーグリップを使う日は、これまでラットプルダウンで使っていた重量を基準にします。握り方が変わるため、同じ重量でも動きの感覚が変わることがあります。
肘の軌道や上体の位置を大きく変えず、セットの後半まで同じように引けるかを見ます。動きがそろっていれば、その重量でパワーグリップの使い方を確認できています。
握りやすさだけで重量を決めず、まず同じ重さで動作をそろえてください。
肩がすくむときは、肘を下へ引きやすい重さに戻す
重量が重くなると、バーを動かそうとして引く局面で肩が耳へ近づき、首まわりに余計な力が入りやすくなることがあります。握力に余裕があっても、この状態が続くなら重量を下げて動きを確認します。
重さを少し下げて、上体を大きく動かさず肘を下へ引けるかを試します。軽くしたことで動作がそろうなら、その重量を基準に続ける方が変化を追いやすくなります。
重量を増やすことだけを進歩とせず、同じ重さで動きが安定してきたことも次の重量へ進む材料になります。
上体の反動が増えたら、まず重量を軽くする
バーを下ろすために上体を大きく後ろへ倒したり、勢いを付けて引いたりするようになったら、重量が今の動作に合っているかを確認します。
パワーグリップで握りが補助されると、手だけを見ると余裕があるように感じることがあります。それでも上体の反動が増えるなら、まず重量を軽くして同じ軌道で引ける状態へ戻します。
重い重量を動かすことより、セットの最初から最後まで同じ動きで引ける重さを選ぶ方が、初心者でも重量設定を判断しやすくなります。
まとめ|ラットプルダウンで握力が先に疲れるならパワーグリップを使う
ラットプルダウンでパワーグリップを使うか迷ったら、まず背中と握力のどちらが先に疲れているかを見てください。背中にはまだ余裕があるのに手や前腕が先につらくなるなら、握りを補助する目的で試せます。
装着しただけで広背筋への刺激が大きくなると考えるより、握りを補ったうえで、手幅と重量を同じ動作で引ける範囲へ合わせる方が実践的です。
・使うタイミング:背中より先に手や前腕が疲れるとき
・装着方法:使用製品の説明を確認し、ベロをバーへ巻いたあと通常どおり握る
・ワイドグリップ:肩幅よりやや広めから試し、肩や肘を動かしやすい位置を探す
・重量:最初はこれまでと同じ重さで動作を確かめ、上体の反動が増えない範囲で進める
初めて使う日の進め方
・いつものラットプルダウンと同じ重量から始める
・ベロの巻き方と外し方を軽い状態で確かめる
・手幅や重量を一度に変えず、一つずつ試す
ラットプルダウンそのものの座り方、バーを引く位置、基本的な重量設定まで確認したい場合は、ラットプルダウンの効果と正しいやり方もあわせて確認すると、パワーグリップを使う前後の違いを整理しやすくなります。

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